WindowsNT3.51 インストール方法



WindowsNT4以前の環境を構築する意義


1990年代初頭、PC-9801シリーズでは MS-DOS がすっかり定着し、 アプリケーションの充実ぶりも目を見張るものがありました。 個人的には「これで十分」と感じていたほどです。 一方で、CUI(キャラクタ・ユーザインターフェース)の短所についても言及され始め、 雑誌などでは「次世代OSはGUI(グラフィカル・ユーザインターフェース)になる」と盛んに語られていました。 各社が競い合い、さまざまなGUI OSの開発に取り組んでいた、そんな時代でした。

その中で頭ひとつ抜け出し、ユーザーインターフェースの標準を確立したのが、 マイクロソフトの Windows95です。使いやすさを前面に打ち出し、家庭や一般ユーザー層にも広く浸透しました。 しかし、マイクロソフトが本当に目指していたOSは、MS-DOSや16ビットCPUの延長ではなく、 完全な32ビット化とプリエンプティブマルチタスクを実現した、より堅牢な設計のものでした。 それが WindowsNTです。

Windows95は他社との競争に勝つため、実用性と操作性を重視したOSとして設計されましたが、 WindowsNTは将来を見据え、理想的なアーキテクチャを追求したエンタープライズ志向のOSでした。 その理想を実用に近づけるため、NTは 3.1 → 3.5 → 3.51 と改良を重ね、 そしてWindows95のGUIとNTの安定性を統合した完成形として登場したのがWindowsNT4.0でした。

誤解を恐れずに言えば、Windows NT4.0以前のバージョン(3.1、3.5、3.51)は、 完成までの通過点という意味合いが大きいものとなっています。 実用性という観点では未成熟な部分が多く、現在での利用価値は限定的です。 過去のアプリケーションやシステムの動作検証・保存目的であれば、 NT4.0ひとつでNT系の初期機能を広くカバーできるため、これだけでも充分と言えるでしょう。

敢えてNT3.51を選ぶ理由があるとすれば、それは主に「歴史的な意義」を知ったり 「当時の空気感」を感じ取ることにあります。 一旦、実利は度外視して、まずは歴史を辿ってみましょう。 その中から存在意義や設計思想を見つける、というのが エミュレータ上でレトロOSを構築する最大の醍醐味かも知れません。

発売日OS名称内部バージョン備考
1993/07/27 (火)NT 3.1NT 3.1初期NTカーネル
1994/09/21 (水)NT 3.5NT 3.5より実用的に進化
1995/05/30 (火)NT 3.51NT 3.51Windows95のAPIを取り入れる
1996/07/29 (月)NT 4.0NT 4.0DirectXを取り入れ、見た目もWindow95に
2000/02/17 (木)Windows 2000NT 5.0NT初のAD搭載、安定性重視の企業向け
PC-9801シリーズは、Windows2000までとなります
2001/10/25 (木)Windows XPNT 5.1一般ユーザーにNT系を普及させたOS
2003/04/24 (木)Windows XP x64NT 5.264bitサポート、セキュリティ強化
2007/01/30 (火)Windows VistaNT 6.0新UI(Aero)、UAC導入、重さが不評
2009/10/22 (木)Windows 7NT 6.1Vistaの改良型、高評価で長寿命
2012/10/26 (金)Windows 8NT 6.2タブレット意識のモダンUI導入
2013/10/17 (木)Windows 8.1NT 6.38の修正バージョン、スタートボタン復活
2015/07/29 (水)Windows 10NT 10.0バージョン番号が 10 にジャンプ、長期運用OS
2021/10/05 (火)Windows 11NT 10.0(継続)内部的にはWin10と同じNT 10.0、UI刷新



CDブートができないPC-98シリーズ


フロッピーディスクは登場以来、その扱いやすさや当時としては大容量・高速なアクセス速度により、 従来のカセットテープ等に代わる記録媒体として広く普及しました。 やがてハードディスクが登場し、主記憶装置としての役割はそちらに譲りますが、 フロッピーディスクは長らくリムーバブルメディアとして使われ続けます。

しかし、1990年代に入ると、オペレーティングシステム(OS)やアプリケーションの大容量化が進み、 かつての利点であったフロッピーディスクの容量や速度が、かえって足かせとなっていきます。 複数枚のディスクを入れ替えながらインストールを待つという作業は、 次第にユーザーのストレスとなっていきました。

このような背景のもと、コンパクトディスク(CD-ROM)が登場します。 大容量・高速アクセスが可能なCDは、1990年代半ばには OSやアプリケーションの提供媒体として広く用いられるようになります。

この時期、パソコンの起動方式にも変化が訪れます。 それまで一般的だった「フロッピーディスク → ハードディスク」の起動チェックに加えて、 CD-ROMから直接起動する「ブータブルCD」の仕組みが登場し、DOS/V機を中心に徐々に普及していきました。 これは、El ToritoというCDの起動規格に基づいており、対応するBIOSを備えたハードウェアであれば、 CD-ROMのみでOSのインストールが可能になります。 この流れにより、OSの提供形態もWindowsNT4.0以降のバージョンではCD-ROMによるブートが標準となります。

一方、NECのPC-98シリーズは、独自のハードウェアアーキテクチャを採用していたこともあり、 この「ブータブルCD」への対応が行われないまま、シリーズとしての役割を終えることになります。 そのため、PC-98環境でWindowsNTを構築する際には、残念ながらCDブートの恩恵にあやかれません。 一般的な方法とは異なる、特殊な手順や準備が必要になります。



個人的な都合+オリジナルの対処方法


ここで少し私の個人的な話をさせて頂きますが、PC-98シリーズ用のNT系のOSは、 一部所持していないものや、インストールにトライしたが原因不明のエラーで断念したものがあります。

実質、NT3.51以降に絞って、その構築方法の一例を示していきます。 MS-DOSの知識を持っていて、実機でのWindowsOSのインストール経験をお持ちの方を ターゲットとさせて頂きますことをご了承ください。

OS名称所持インストーラの起動環境構築
NT 3.1FD版を所持FDブートのみインストールできず
NT 3.5所持していないFDブートのみ
NT 3.51CD版を所持FDブートのみ今回、インストールを実施
NT 4.0CD版を所持PC-98ではCDブートできず環境構築済み
Windows 2000CD版を所持PC-98ではCDブートできず環境構築済み


WindowsNT3.51(PC-98版)は、FD4枚とCD1枚の構成です。FD1〜3を用いてセットアッププログラムを起動できますが、 Neco Project で試した限り、この方法では CDドライブが認識されず、インストール作業が進みません。 CD媒体で提供されているにもかかわらず、CDドライブが正しく認識されないという状況が、 実機で発生していたかは不明ですが、OSが想定するハードウェア構成とエミュレータ環境との間に 差異があるためと考え、ここではその原因追及には踏み込まず、実用的な回避策に焦点を当てます。 私が思いつくのは、次の2パターンです。

【パターン1】CDドライブをMS-DOS経由で使用する方法
・1つのハードディスクイメージを作成
・MS-DOSをインストールし、CD-ROMドライバを組み込み
・ハードディスクから起動し、CD内の PC98\WINNT /B を実行

【パターン2】CD内容をハードディスクに展開して使用する方法
・2つのハードディスクイメージを作成
・イメージ@:MS-DOSをインストール
・イメージA:CDの \PC98 フォルダをコピー(SP5やドライバも配置可能)
・イメージ@でブートし、イメージA上の WINNT /B を実行

なお、パターン1・2ともに、製品のFD4枚は不要となります。

私は、MS-DOS6.2の緊急ディスクというものを作っていますので、 これをもとにCDドライブを認識するHDブート領域を作ることが比較的簡単にできます。 詳細はMS-DOS 6.2での緊急用起動FDイメージ作成を参照下さい。

Neco Projectの構成例は以下の通りです:
・メモリ:16MB
・ハードディスク:512MB(.nhd形式)
ハードディスクイメージは、Neco Projectのメニュー「Emulate」 → 「New Disk」 → 「Hard disk image」から作成します。 ファイル形式は「.nhd」を選び、新規に作成したディスクをマウントしてください。


長い前置きはここまで、あとは実行あるのみ


それでは、インストールを実施していきましょう。
FD起動して、FORMATコマンドで初期化・領域確保を行います。 FDの中身をハードディスクにコピーし、HD起動でFD起動と同じ状態になるようにします。 FDをイジェクトし、HD起動します。QドライブがCD用にアサインさせていることを確認します。 CDドライブにNT3.51のCDをマウントし、「Q:」「CD PC98」とします。 ここにWINNT.EXEがありますので「WINNT /B」を実行します。
これでインストールプログラムが起動します。


「NTファイルが格納されているパスを入力してください。」という案内が出ます。
「Q:\PC98」となっていると思いますので、そのままエンターキーを押します。
ハードディスクへのコピーが始まります。100%になるまで待ちます。


コンピュータの再起動を実行しますという案内が出ます。
FDはイジェクト済みのため、そのままエンターキーを押します。
再起動をWindowセットアップ画面となります。
特にヘルプの表示や修正等は不要ですので、そのままエンターキーを押します。
セットアップ方式の選択画面となります。
上級者はカスタムセットアップでも構いませんが、ここでは高速セットアップを選択、そのままエンターキーを押します。
追加デバイスの指定が可能となりますが、特に必要ありません、そのままエンターキーを押します。
セットアップ先は「A: FAT」としますのでそのままエンター、NTFSへの変更をしますかと問われます。 このタイミングでNTFSに変換しても構いませんが、後からでも可能ですので、ここではFATのままとして進めます。


インストール先は特に変更不要、「\WINNT35」のままとしますので、そのままエンターキーを押します。
ディスクの検査後、ファイルのコピーが行われます。これも100%になるまで待ちます。
また再起動の実行確認となりますが、そのままエンターキーを押します。

ここから先は、私が実施した例を示しますが、基本的には自由に進めて頂ければいいと思います。

氏名・会社名の入力画面となります。氏名は必須、会社名は任意となります。
ここでは「*」として次へ進みます。
コンピュータ名の入力、これも特に何でも構いませんが、ここでは「NT351」としておきます。


各国対応は「日本語」で、プリンタは使わないの「キャンセル」で、
ネットワークアダプタは「検出されず」のままでよしとします。

コピーが開始されますので、ここでも100%になるまで待ちます。



Administratorのパスワードの入力画面となります。ここでは、未入力で進めます。
ローカルアカウントの作成画面となりますが、特に不要、キャンセルで進めます。
日付と時刻の設定、特に変更不要、そのままOKボタンを押します。

システムは、次のビデオアダプタを検出しました、にも、そのままOKボタンを押します。
構成を保存しています、これも100%になるまで待ちます。



システム修復ディスクの作成をするかの問いに「いいえ」ボタンを押します。
コンピュータの再起動の確認画面、再起動ボタンを押します。
再起動後、Ctrl + Alt + Del の3キーによる、ログオンを実施します。
これを毎回行うのが面倒であれば、レジストリの設定で自動化も可能です。
サービスパックはSP5が最終です。ファイルマネージャーからCDドライブが参照できますので、そこから実行しておきましょう。



以上で環境ができあがります。Windows95用のプログラムのうち、 標準的なAPIのみを使用している(行儀の悪いことをしていない)ものは、動くものと思います。

インストール画面はWindows95のようで、OSが起動するまでの流れはNT4で、OS起動後はWindows3.1という、 ちょっと風変わりな過渡期OSを楽しむのも一興かと思います。


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