MS-DOS 6.2 インストール方法



インストールは極めて簡単


MS-DOSのバージョンが 3.3 〜 5.0 〜 6.2 とアップしていく中で、OSの機能そのものがアップしていくことはもちろんなのですが、 インストール作業も大変簡単になりました。MS-DOS 3.1の途中 から「システムディスクからの起動」=「メニュー画面の起動」となっていたものが、 MS-DOS 3.3C から「システムディスクからの起動」=「ハードディスクへのインストール」となり、フロッピーディスクはインストールのためだけに存在し、利用する時はハードディスクという前提でOSが提供されるようになりました。 ハードディスクが一部の物好きの、じゃなかった一部のお金持ちの、じゃなかったパソコンをより高度使いたい人だけのものではなく、 一般ユーザーに浸透していったことが、このことから覗えます。 画面と対話していけば誰でもインストールできるようになったことで、インストール作業の敷居が下がり、 ここから「パソコン」=「MS-DOS」という図式が出来上がって行ったと言っても過言ではありません。

簡単になったとは言え、若干の注意点があります。6.2ではダブルスペースという圧縮ユーティリティが導入された関係で、 セクタ長は512バイトでなければ動かなくなりました。Neko ProjectのHDIファイルは256バイトのため、6.2をインストールしても起動しません。 対処方法としては、ANEX98のHDイメージ作成機能を使うか、Neko Projectで完結させたければVHDやNDHのファイルにするなどがあります。
あと、インストール時の画面に「32メガバイト以上を指定してください」と表示されている通り、インストール先は32メガバイト以上である必要があります。 一例として、メニューより「Emulate」−「New Disk」−「Hard disk image」で、ファイルの種類「vhd」を選択し、80メガバイトで新規作成します。


それでは、実際にインストールを実行してみましょう。まずは、以下の状態でマシンを起動します。
・FDD1 MS-DOS 6.2 システムディスク
・IDE#0 先ほど作成した80MB HDDイメージ

起動を実行すると、以下のような画面が現れます。
 インストールコマンド         Ver. 3.00                                        
――――――――――――――――――― Copyright (C) NEC Corporation 1990,1994 -
固定ディスクの準備                                                              
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
MS−DOSで確保する容量を指定して、リターンキー(氈jを押してください        
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
確保可能な最大容量は  81メガバイトです                                          
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
確保容量=  81 メガバイト(32メガバイト以上を指定してください)               
                                                                                
(ESCキーを押すと前の画面に戻ります)                                        
                                                                                
                                                                                

画面の指示通り、作業を進めて行きます。特に理由がなければ全てデフォルト値でOKです。
 インストールコマンド         Ver. 3.00                                        
――――――――――――――――――― Copyright (C) NEC Corporation 1990,1994 -
システムファイルの転送                                                          
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
インストール先のディレクトリを指定して、リターンキー(氈jを押してください      
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
ディレクトリ=\DOS                                                              
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                

#1の内容が全て転送され、フロッピーディスクの交換(#2)が求められます。
 インストールコマンド         Ver. 3.00                                        
――――――――――――――――――― Copyright (C) NEC Corporation 1990,1994 -
システムファイルの転送                                                          
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
システムディスク#2の内容を固定ディスクに転送します                            
                                                                                
挿入されているフロッピィディスクを、システムディスク#2に差し替えてください    
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
準備ができたらリターンキー(氈jを押してください                                
                                                                                
(ESCキーを押すと処理を中止することができます)                              
                                                                                
                                                                                
以下、必要な枚数分、FDDの入れ替え作業を行えばインストールが完了します。
最大の問題は、バージョン5までは3枚だったFDが、6.2では8枚と、大幅に増えたことです。インストール時、ちょっと進んだかと思えばすぐFD入れ替えを促され中断、これを何度も繰り返し行わなければならず・・・って大した問題ではありませんね(笑)。

バージョン5以降は、インストールが完了すると「DOS SHELL」という、見た目はかなりグラフィカルなメニュー画面が自動的に立ち上がることになりました。これがWindowsへ移行していく布石にもなったと思います。

MS-DOS 6.2の「DOS SHELL」はこんな感じです。




緊急時用FD起動イメージを作ろう!


ハードディスクが普及してからは、フロッピーディスクの出番はかなり少なくなりました。ただ、ハードディスクが正常に動いているうちは、何の問題もないのですが、何らかの原因でハードディスクが起動しなくなる場合があります。ハード的に故障した場合もありますし、起動に必要な情報を誤って書き換えてしまった場合もありますし、コンセントが外れている場合もあります。 こんな時に役に立つのが「緊急時用フロッピーディスク」です。
(※註)コンセントが外れている場合には何の役にも立ちません、あしからず・・・

転ばぬ先の杖ということで緊急時に備えるのは、ある程度のパワーユーザは実機では必ず行って来たことですが、これは仮想環境でもそのまま役に立ちます。実機では、OSがバージョンアップしたり、周辺機器が増えたりする度に細々した修正を余儀なくされてきましたが、仮想環境では、事実上の完成版と言えるMS-DOS 6.2を使って、エミュレータで使用するハードウェアをサポートできるものをひとつ用意すれば充分でしょう。
まずは「万能フロッピーディスク」のイメージ作成として、1枚のディスクという限られた容量にどれだけの機能を持たせられるか挑戦することは、面白くもあり、MS-DOSをより深く知ることになります。ゲーム感覚で楽しく勉強しちゃいましょう。



まずは試しに作って見ます


MS-DOS 6.2が起動した状態で、新しいフロッピーディスクイメージを作成します。容量は1.25M、拡張子はhdmのものを使用します。
このディスクイメージをFDD1にマウントします(これがBドライブとなります)。
FORMATコマンドで、フロッピーディスクを選択し、Bドライブを初期化、この時システム転送を「する」にしておきます。
  FORMATコマンド         Ver. 6.00                                        
――――――――――――――――――― Copyright (C) NEC Corporation 1983,1994 -
                                                                                
                                                                                
          装置番号            B:                                                
                                                 ┌──    接続状況    ──┐   
          システム            転送する           │                        │   
                                                 │B: フロッピィディスク #1 (内蔵)│   
          ボリュームラベル                       │C: フロッピィディスク #2 (内蔵)│   
                                                 │                        │   
          媒体種別            2HD(1MB) FD        └────────────┘   
                                                                                
          実 行                                                                
                                                                                
          終 了                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
                                                                                
装置番号を指定してください                                                      
矢印キー(↑・↓・←・→)で項目を選択し、リターンキーを押してください          
(ESCキーを押すと処理を中止することができます)                              
B: C:                                                                           
                                                                                

システム転送が行われた時点で以下の3ファイルが転送されています。
 ・IO.SYS
 ・MSDOS.SYS
 ・COMMAND.COM

IO.SYS・MSDOS.SYSは、システム属性・隠し属性が設定されているためDIRコマンドでは表示されませんが、 ちゃんとコピーは行われていますので安心して下さい。どうしても気になるという神経質な方は「DIR /AH」または「DIR /AS」として見て下さい。えっ、今度はCOMMAND.COMが表示されない?それなら「DIR /AA」として見て下さい。天気に恵まれた運の良い日には3つとも見ることができます(笑)。

MS-DOS 6.2としてインストールされたファイルの中から、緊急時に使うものをフロッピーディスクにコピーをすることになりますが、そのためには、コマンドプロンプトから以下のようにコピーコマンドを実行します。コピー元は、インストール時に設定を変えていない限り「A:\DOS」となりますので、実行するコピーコマンドはこんな感じです。

COPY A:\DOS\xxxxxxxx.xxx B:    ※xxxxxxxx.xxxがファイル名になります。

具体的にどのファイルをコピーするかは、何をしたいかにもよって変わりますが、私の場合は、
目的ファイル組み込み
拡張メモリを
使用するために
 ・HIMEM.SYS
 ・EMM386.EXE
CONFIG.SYSに以下の内容を組み込む
DEVICE=A:\HIMEM.SYS /TESTMEM:OFF
DEVICE=A:\EMM386.EXE /UMB
CDドライブを
使用するために
 ・NECCDA.SYS
 ・NECCDB.SYS
 ・NECCDC.SYS
 ・NECCDD.SYS
 ・MSCDEX.EXE
CONFIG.SYSに以下の内容を組み込む
DEVICE=A:\NECCDC.SYS /D:MSCD001

AUTOEXEC.BATに以下の内容を組み込む
MSCDEX /D:MSCD001 /L:Q /E
その他 ・FORMAT.EXE
 ・HDFORMAT.EXE  
 ・HDUTIL.EXE
 ・SYS.EXE
 ・XCOPY.EXE
 ・SYMDEB.EXE
実行ファイルを置くだけでOK
としました。これらの中には、実行ファイルを置くだけでいいものとデバイスドライバとして機能するように設定を行う必要があるものがあります。SEDITなどのエディタを使って、CONFIG.SYSとAUTOEXEC.BATを以下のような内容で置いて下さい。

【CONFIG.SYSの内容】
FILES=30                                                                        
BUFFERS=10
SHELL=A:\COMMAND.COM A:\ /P /E:512
DEVICE=A:\HIMEM.SYS /TESTMEM:OFF
DEVICE=A:\EMM386.EXE /UMB
DEVICE=A:\NECCDC.SYS /D:MSCD001
DOS=HIGH,UMB
LASTDRIVE=Z

【AUTOEXEC.BATの内容】
@ECHO OFF                                                                       
PATH A:\
SET PROMPT=$P$G
SET TEMP=A:\
SET DOSDIR=A:\
MSCDEX /D:MSCD001 /L:Q /E

私の場合、更にエディタとしてMIFES、ファイラーとしてGFなどを入れ、自作ツールなどもここに含めています。

緊急時に何を行いたいか、どのようなハードウェアを使いたいか、など、個人差があります。私が示すのは一例であり、使いやすいように内容を読み替えて、自分にとって便利なものにしてみて下さい。



実はフロッピーにこだわらなくても・・・


便利さを追求し過ぎると、1.25MBのフロッピーなどあっと言う間に一杯になります。じゃあ、1.44MBのフロッピーにしましょう、と言っても焼け石に水だったりします。そんな時、それではと2枚目のフロッピーを用意する人がいます。ハードディスクを持たない頃からFD起動でMS-DOSを使いこなして来た人に多いです。
でも、ちょっと待って下さい。フロッピーディスクの何枚目に何が入っているかを把握しておかなければならないだけでも余分な負担ですし、その都度フロッピーディスクイメージファイルを取り換えを行うのも面倒な作業です。

ここでひとつ考えておきたいのが「何故フロッピーを使うのか?」ということです。
これは「フロッピーディスクの利便性とは何か?」と言い換えてもいいでしょう。

90年代前半、職場のノートパソコンの解体をしたことがあります。実は解体自体は誰でもできるのですが組立は相当苦労しました。 それを何度か行ううちに徐々に熟練の域に達しました(別に嬉しくないですが)が、この時の経験から、 90年代後半から2000年代は自宅では(部品の取り外しが簡単な)タワー型のPCにこだわっていました。 ハードディスクは基本リムーバブルケースに入れて取り外し可能な状態で使っていました。 それでもハードディスクを替える時にBIOSの設定が必要だったりして、そんなに容易な作業ではありませんでした。 それを思うと、フロッピーディスクって何とありがたいのだろうと実感できます。

でもそれは実機の話しです。仮想環境ではどうか、というとハードディスクの交換は、 マウントするイメージファイルの再選択を行うだけですので、手間としてはフロッピーディスクと変わらぬ小さなものと言えます。 ブートを切り替える手間が同じなら、容量の多いハードディスクの方が便利になるのは明白です。

OSをインストールし、よく使うアプリをインストールし、自分の使いやすい状態にカスタマイズする、 という一連の作業を行った状態でバックアップを取ると思います。 これは、何か壊れた時などにいつでも元の状態に戻せるように行うバックアップですが、 実はそのまま緊急時用FD起動イメージの代わりとして使えてしまうのです。 実機でのバックアップは、コピー先の容量を確保してファイルやディレクトリ単位でコピーするなど、大変な手間がかりますが、 仮想ではHDイメージファイルのコピーだけで済んでしまいます。

私自身、ブート用FDは作っては見たものの、実はほとんど出番がありません。 もし、ブータブルCDが使えるのであれば、FD起動できるイメージファイルを選択できるメニューなど作ったりできて役に立つのですが、 残念ながらPC-98はCDによるブートができません。仮想マシンでは、ハードの故障もありません(と言うかハードそのものがない)ですしね。

かつて実機を使った経験がないと、なかなか仮想環境を使いこなすことができす、 実機経験が豊富でも固定観念でしか考えられないと、仮想ならではの便利さに気付きません。 仮想マシンのメリットを最大に引き出すことは大変難しい作業なのですが、その理由はこんなところにあります。

仮想の概念を理解し、その利便性を活かし、仮想マシンの便利さに負けないパワーユーザーになれれば、 コンピュータ技術者とし大きなアドバンテージを所有したことになります。



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