Windows 3.1 インストール方法



Windows 3.1への意識の切り替え


Windows 3.1について、まず申し上げておかなければならないことは、厳密に言うとこれは「OS」ではなくMS-DOS上で動く「アプリ」だということです。 できあがった環境を使うだけなら意識することもないのでしょうが、インストール時には必須の前提知識となります。 MS-DOSをインストールした状態でないとWindows 3.1をインストールすることができません。 この後のバージョン「Windows95」ではMS-DOSなしで単独でインストールができるようになり、 更にこの後も内部的にMS-DOSに依存していた部分を段階的になくしていくことになる訳ですが、この時代はまだ「MS-DOSあってのWindows」でした。 ユーザの意志次第で「Windows専用」にするか「Windowも使えるMS-DOS」にするか選択可能ですが、 実はその差がAUTOEXEC.BATに「WIN」の一行があるかないかだけだったりします。 その上、Windows3.1には「MS-DOSプロンプト」というアイコンがあり、これを起動すればMS-DOSのアプリは基本的に全て使用可能です。 そうなると、Windows環境をヘビーに使うかどうか別にして、取り敢えずインストールだけでもしておいた方がいいのではないかという気がしますが、 そう簡単な話しではない事情が当時はありました。

ひとつは、OS(アプリ)が要求する「マシンスペックが殊の外高い」ということです。スペックが高いということは、初期導入コストが高いということです。 導入に踏み切るかどうかの判断材料として、導入コストがいかに大きいかということは、私がここで改めて述べる必要もないでしょう。 私の拙い記憶では、最小スペックと推奨スペックの2種類が登場するようになったのもこの頃だったように思います。私はそこにも違和感を覚えました。
OSCPUメモリディスク外部装置
Windows3.1最小i386SX2.6MB40MBFDD
Windows3.1推奨i386SX5.6MB80MBCD-ROM
Windows95最小486SX(20MHz)以上8MB75MBCD-ROM
Windows95推奨486SX(20MHz)以上12MB ? CD-ROM
Windows98最小486DX(66MHz)以上16MB190MBCD-ROM
Windows98推奨Pentium以上32MB300MBCD-ROM
Windows2000最小Pentium(互換)133 MHz以上64MB2GB(空き650MB以上)CD-ROM
WindowsME最小Pentium150MHz以上32MB空き295MB以上CD-ROM
フロッピーディスクからCD-ROMへ、パソコン通信からインターネットへ、静止画・音声に加えて動画も扱える、 などこの頃から始まったムーブメントは、Windows95・98と進むころにはすっかり定着しました。 マルチメディアという言葉が市民権を得たのもこの頃だと記憶しています。 今振り返れば、パソコンに求めるものが大きく変わる礎となったOSであり、斬新な部分も多いですが、 従来のMS-DOSユーザにとっては、とっつきにくさがあったことは否めません。

もうひとつは、MS-DOSに慣れたユーザにとっては「操作性が大きく変わってしまう」ということです。

これは、Windows 3.1固有の問題ではなく、CUIからGUIに移行する際に起こる普遍的な問題ですが、 Windows 3.1辺りからGUIが広がって行きましたので、このタイミングでクローズアップされたように感じます。 これからパソコンを覚えようという人にとっては、コマンドを覚えてキー入力しなければならないCUIよりも、 画面上のどこかをクリックするだけでいいGUIの方が覚えやすいのは間違いない事実です。 ところが、コマンドの知識を持ちキーボードの使い方にも慣れたユーザにとっては、 ショートカットキーひとつで済む作業がボタンまでマウスカーソルを移動してクリックしなければならないだけでも面倒に感じたりします。

このことは、Windowsの課題ではなくMS-DOSユーザの課題なのかも知れませんが、私の場合、 メイン環境を使い慣れたMS-DOSから正体不明なWindows(は、ちょっと言い過ぎか)に切り替えようという気にはなかなかなれず、 職場ではWindows 3.1、自宅ではMS-DOSという状況がしばらく続いたことを覚えています。




外面だけでなく内面についても少し触れておきます


インテル社が8086のCPUを開発して以降、80286・80386と進化して行きましたが、OSがこれに追い付いて行けてないために、 これらの後継CPUを単に「高速な8086」としてしか使えなかった状況が続いていました。
リアルモードのみだったCPUに、新たにプロテクトモード・仮想86モードが加わったものの、リ アルモードでしか稼働したことがないCPUが世間全体に一体どれだけあったのかと想像すると、何と「もったいない」ことか。 ワンガリ・マータイさんもさぞや嘆いていたことでしょう(知らないけど)。

厳密には、CONFIG.SYSの設定によってはプロテクトモードなどが使われていたのですが、 ユーザーがそれに気づいていないとか、プロテクトモードならでは機能を使用したアプリが皆無とか、 そういう意味では「高速な8086」という括りでよいものと思います。

プロテクトモードも含めてCPUの性能を引き出した数少ない例外として「DOSエクステンダー」がありますが、 これは一般のプログラマでも敷居が高く、積極的に使った人はごく少数と思われます。 DOSエクステンダーは、その後に購入した開発ツールに付属していましたので、CPUの勉強も兼ねて、改めて挑戦してみたいテーマだと思っています。

MS-DOSが16ビットOSであるため(個人的には20ビットOSと思っていますが)、どうしても16ビットのしがらみがある中、 開発中のWindows95(当時はシカゴと呼ばれていました)の登場を待つ前に「Win32s」が利用可能になります。 これはOSの一部を32ビット化して高速な処理を実現するランタイムルーチンで、当時新しいもの好きの職場の同僚がいち早く導入していましたが、 これがどれほどの効果があったのか私は知りません(苦笑)。 ただ、この「Win32s」の登場が、それ以降の「32ビットOS時代」の到来を強く印象付けたことは確かです。

Windowsそのものは機種に依存しますので、PC-98にはPC-98用のWindows 3.1、DOS/V機にはDOS/V機用のWindows 3.1を用意しなければなりません。 ところが、このOS上で動くアプリは原則的には汎用で、Windows 3.1がインストール済みであれば機種に関係なく使えます(一部例外あり)。 アプリが共通して使えるということは、データも共通して使えるということになり、機種が異なってもどちらも同じように使えるようになります。 マシン本体とアプリの仲介役をOSが行うことでアプリが機種依存しなくなって行ったのは大きな進化と言えます。

ベルリンの壁崩壊(1989年11月)から約2年、パソコンの機種の壁もこうして崩壊に向かうのでした(本当かよ)。



インストールの前に媒体の問題を解決しておきましょう


私が自宅にWindwos 3.1を導入した頃は、CDを扱える装置がなっかったためフロッピーディスク版を購入しました。 その後、MSDNレベルU会員になり、OSなどは無償で配布されるようになりました。 現在は、その時入手した「16BITOS」というCD-ROM一枚(もっと厳密に言うとそのISOイメージファイルひとつ)だけで事足りるので重宝しています。

余談ですが、16BITOSというCDのWindows 3.1関連のフォルダには、世界各国のOSが入っています(下記参照)が、 日本語用のものだけ「98」と「V」のふたつに分かれています。 国際標準機以外でその国独自のマシンが普及していたのは日本だけです。 当時の日本にあった「国民機・PC-98」という文化は、世界でも稀な特殊事情であったということが改めてよくわかります。

フォルダー パスの一覧:  ボリューム 16BITOS
ボリューム シリアル番号は 8980-9E4D です                                        
G:.
├─ARABIC
├─CATALAN
├─CENTEUR
├─CHINESE
├─CZECH
├─DANISH
├─FINNISH
├─FRN_ARA
├─GREEK
├─HEBREW
├─HUNGARY
├─JAPANESE
│  ├─98
│  └─V
├─KOREAN
├─NORWEGN
├─PERSIAN
├─POLISH
└─RUSSIAN


CD版を持っている人の場合は、CDドライブが利用できる状態を作っておけば、マウントしたCDからセットアップ作業ができ、 フロッピーディスクを何度もマウントし直すという面倒な作業から解放されますが、 フロッピーディスク版しか持っていない場合はどうなるのでしょう?MS-DOS 6.2の8枚でも大変なのに、Windows 3.1のフロッピーディスク版は24(+1)枚もあります。 想像しただけでうんざりしますが、でも大丈夫です、実はFD版からCD版が作成できるのです。

MS-DOS時代、アプリの提供は基本的に全てフロッピーディスクでした。 通常1.25Mという限られた容量から、全てが1枚では収まらないほどのアプリになると、複数のフロッピーディスクに分割することになります。 インストーラは、FDの入れ替えが正しく行われたかどうかの判断が必要になりますが、 多くはフロッピーディスクのボリュームラベルを「DISK1」「DISK2」・・・などとして、これを利用していました。

1990年代前半、音楽の提供がレコードからCDに入れ替わっていく中、パソコンをCDプレーヤーとしても使いたいという要望も芽生え、 Windows 3.1の頃には、それも徐々に実現されて行きました。 そうなると、CD媒体の容量の大きさが着目され、パソコン用のデータとしても使えるように進化します。 CDにその座を奪われたのはレコードだけではありませんでした。 FDの後任としても認められると、大容量のアプリはFD版とCD版の両方が用意されるようになりますが、この時障害になるのが「ボリュームラベルによる判定」でした。 そのままだと、FD版とCD版でインストーラを別に用意しなければなりません。 それを解決するために徐々に広まっていったのが「ファイルによる判定」です。 具体的に言うと「DISK1」というファイルが存在するかどうかでそのドライブにディスクの1番目が挿入されているかどうかを判断します。 容量の制限が(実質)ないCDには各FD媒体の全ファイルをまとめて配備します。 こうすることによって、CDは全FDがセットされた状態とみなされ、媒体の入れ替えなしにノンストップでのインストールが実施されます。 この方式を用いることで、FD版としてもCD版としても使えるインストール用のコンテンツとすることができ、 セットする媒体に応じて、FDに分割したり、CDに丸ごと書き込んだりして提供したのです。 このような方式を取った製品はFD版とCD版の内容はもともと全く同じたっだので、フロッピーディスク24枚分のファイル全てを1つのフォルダにまとめてしまえば、 媒体の容量の都合で分割した内容が元の状態に戻り、CD版として使用できるようになります。

インストーラを汎用的にするかどうか、それ以前にそもそもFD版とCD版の両方を用意するかどうかも各メーカーの独自の判断になりますので、 全ての製品に於いてこの手法が使える訳ではありませんが、Windows 3.1の場合は大丈夫です。

CDイメージの作成方法はそれほど難しいものではないでしょう。 CD・DVDなどのライティングソフトで、全フロッピーの内容をひとつのフォルダにコピーして、その内容をCDのイメージとして(拡張子ISOにして)書き込めばOKです。 私が愛用しているのは「SuperウルトラISO」という有償のアプリですが、フリーソフトでも充分使えるものがありますでの、 FD版しか持っていない方は、是非CD作成に挑戦してみて下さい。





ちなみに、Neko Projectは後発ということもあり、CDのサポートでは他の追従を許しません。 PC-98エミュレータにCDのサポートがどこまで必要かという問題はありますが、このサポートの充実さは特筆すべき点があります。

PC-98エミュレータバージョンCD物理ドライブCDイメージファイル
Anex86Ver.2.77サポート未サポート
T98-NEXTVer.1.00未サポート未サポート
Virtual98Ver.1.42未サポート未サポート
Neko Project 21WVer.0.86 Rev.45サポートCUE/CCD/CDM/MDS/NRG/ISO

CDのイメージファイルについて、このタイミングで少し説明致します。 各社のライティングソフトは、CD媒体への書込の際に、通常「CDイメージファイルの作成」という一手間をかけています。 書込時にデータが間に合わなくてエラーになるのを防ぐのが主な目的と思いますが、これは、同じ媒体を何枚も作成する時に無駄が省けるという利点にもなります。 書込時のテンポラリーファイルとして始まったCDイメージファイルですが、仮想CDドライブツールが充実することで市民権を得るようになります。 ファイルをマウントするだけでCDドライブに媒体をセットしたことと同じになるため、CD媒体そのものがなくてもいい世の中を作り出しました。 更に「SuperウルトラISO」のようにISOファイルを手軽にエディットできるツールの出現が、書込ができないCD-ROMの概念まで変えてしまいました。 もちろん、CD-ROM以外にもCD-RやCD-RWなどが存在しますが、物理媒体の書込みというのは手間もコストもかかりますしリスクもあります。 やはり仮想というのは「何かと便利」なんです。

いろいろなメーカーがいろいろな種類(拡張子)のファイルを作っていますが、個人的にはISOがお勧めです。 実は他の種類のファイルは、書込時にISOと同じ形式に変換されています。 ISOで事足りるものを、ファイルサイズの節約など、独自に利点を持たせるため工夫を加えていますが、あくまで独自仕様のため、 そのメーカー次第で将来のサポートがなくなるリスクがあることは常に頭に入れておいた方がいいでしょう。 その点、ISOはCDドライブの中身そのままなので、未来永劫これがサポートされなくなることはあり得ないと断言できます。 Neko Projectは、メジャーな6種類のイメージファイルに対応していますので、これで充分とは思いますが、 これ以外のイメージファイルの場合は、その形式をサポートする仮想CDドライブツールと組み合わせて使うことになります。 あまりにもマイナーなものは、この際だからISOに変換してしまうという手もありかも知れません。

いろいろな方向に話しが飛びましたが、CDでのインストールを行いたい場合は、Neko Projectを使うのが便利でしょう。


ここでもうひとつ、どうでもいい話しを書きますが・・・
先ほど、FD版とCD版が元々同じコンテンツである製品は、FD版からCD版が作れる、という話しをしました。 CD未サポートのエミュレータにCD版の製品をインストールしたいような場合に、CD版からFD版が作れるのでしょうか?
結論から言うと「どのファイルをどの媒体に分割したか」という情報があれば可能です。 それが無い場合に適当に分割してインストーラが正常に動くかどうかは、インストーラの内部仕様によります。
で、可能かどうかということは置いといて、わざわざ不便な方向に持っていくのは無駄な気がしますので、こんな場合には、別の対処方法があります。 CDではなくハードディスクイメージを作ってそこにCDの内容を丸ごと入れてしまえばいいのです。 CDは、ドライバの設定等がないと利用できませんが、ハードディスクはディスクイメージをセットするだけでOKですのでハードルは下がります。 もしもカレントディレクトリがCDドライブがどうかチェックしているインストーラがあればNGとなりますが、そこまでしている製品はまず無いと思います。



インストールの実行


インストール手順そのものに関しては、Neko Project 21/WでWindowsを動かす(Windows 3.1)に詳しく載っていますので、こちらを参照して頂ければいいかなと思います。私自身も、これを見ながらインストールしました。
※2025年02月時点、リンク切れになっています。


個人的な考察も含めて、私が実際にインストールを行った際の手順を示します。

Windows 3.1をインストールする場合、これだけは利用可能にしたいと思うのは
 @高解像度
 Aサウンド
更に、LANによるホストOSとのデータ共有やインターネットが使いたいという場合は
 Bネットワーク
ということになるでしょう。

Windows 3.1の頃は、インターネット利用者などはごく一部の変わり者でした(※私個人の見解です)。 利用不可能ではありませんが、大変苦労する割には大して利用価値が無かったりしますので、ここでは@Aが使えるような環境まで構築します。


エミュレータのハード設定は以下の通りです。 上記の表に「OSに必要なマシンスペック」がありますのでこれも参考になるかなと思います。 実機の場合はコストに関係しますので最小スペックも考慮しなければならない場合がありますが、 仮想環境ではエミュレートするだけ(もっと言うと値を指定するだけ)ですので、ホストOSに余裕がない場合を除いて、基本は推奨値で問題ありません。 後は必要に応じてプラスアルファして下さい。
項目設定値
メモリ13.6MB
サウンドPC-9801-86
アクセラレータMELCO WAB-S
ディスク容量は、OSの基本機能が使えればいいという人は50MB程度、アプリをたくさん使いたい人は500MB程度を目安にするといいでしょう。

注意点は「カスタムセットアップを選択して、ディスプレイ設定を640x400 16色にすること」です。こうしないとインストールが上手くいきません。 この設定は、インストールが正しく行わた後でWindowsセットアップ画面から変更ができます。 これさえ間違わなければ、特に問題はないと思います。 実機でインストールした時の記憶をもとに画面と対話しながら作業を進めていけば、多少時間はかかりますが環境構築が無事完了します。




使用するOSが増えてきたらconfigファイルを利用しましょう


使用するOSを切り替える際、通常はメニューから「Harddisk」−「IDE #0」−「OPEN」としてディスクイメージファイルの選択を行い、 マシンの再起動を行うことになりますが、同時にマシンの各設定も行わなければなりません。 Windows 3.1ではメモリをこれだけ使うから・・・アクセラレータは・・・などとひとつひとつ設定するのは面倒ですし、 対象OSが増えて来るといちいち覚えていられません。
そこで推奨したいのが、OSの稼働確認ができたらその状態をconfigファイルとして保管することです。 メニューから「Emulate」−「Save VM config」で行います。 これで拡張子「npcfg」ファイルが作成されますので、次回からはそのファイルをLoadするだけで済みます。 OSごとに1ファイル作ってしまっていいと私は思います。


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